不当解雇 解決事例1
懲戒解雇撤回、200万円の解決金
40代 Xさんは、サラリーマンとしてY社で10年もの間働いていました。
勤務態度は良好でしたが、とあることがきっかけで、Y社社長と仲のいい同僚のZさんに目をつけられました。
Xさんは、Zさんから会社内に悪い噂を流され、Y社で仕事をやり辛い環境に置かれてしまいました。
妻子のあるXさんは、それでも会社を辞めるわけにいかず、Y社で仕事を続けました。
しかし、Zさんは、嫌がらせに屈しないXさんに我慢できなくなり、Xさんが勤務態度不良であるとの嘘の話をY社社長に話しました。Zさんの話を真に受けた社長は、Xさんを呼び出し、すぐに懲戒解雇処分を下しました。
Xさんからの依頼を受けた当事務所の弁護士は、Y社に内容証明郵便で通知書を送り、解雇の撤回と解決金の支払を求めました。
しかし、Y社側には代理人の弁護士が就きましたが、「Xさんに勤務態度不良であるのは明らか」との一点張りで、当方の求めには一切応じませんでした。Y社側が示した勤務態度不良の事実はXさんの見に覚えのないものばかりで、Xさんは本件懲戒解雇に納得することはできませんでした。
そこで、当事務所としては、Xさんの代理人として裁判所に労働審判手続の申立をしました。
労働審判では、会社側から客観的な証拠は一切示されず(証拠は、Y社側の関係者の言い分が記載された「陳述書」のみ)、結果、第1回目の期日で、解雇は撤回され、Y社が200万円を支払うことで事件は解決しました。
解決のポイント
本事件でY社がXさんに下したのは、「懲戒解雇処分」でした。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも一番重い懲戒処分で、労働者に対する“死刑宣告”と言われています。
通常の解雇と異なり、一般的には、退職金が出ず、即日解雇も許されるとされています(就業規則などに別の定めがある場合を除きます)。懲戒解雇の経歴があるということは、その後の再就職も困難になることもあり、懲戒解雇は労働者にとって非常に厳しいものといえます。
ただ、裏を返せば、懲戒解雇がくつがえされるということは、これらの不利益を受ける理由がなくなり、労働者にとって大きな価値のあるものといえます。
労働者に多大な不利益を与える懲戒解雇は、裁判所でも厳格に判断され、重大な理由がない限りは無効となることが多いです。
本件のように、「勤務態度不良」を理由とする解雇は、通常の解雇でも会社側に損失を被るほどの悪質な場合や、相当回数の不良行為が認められるケースに限られるとされています。ましてや、本件では、Y社は懲戒解雇を行っており、それ以上の立証が求められます。
結果、Y社側は、懲戒解雇の理由を立証できず、結果的に解雇は無効となりました。
解雇は無効となりましたが、会社に戻りたくないXさんは復職は求めず、解決金を求めました。
そして、Y社がXさんに、解雇されてからの賃金に数カ月分の賃金を加えた、計200万円を払うことで解決となりました。